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障害学会第13回大会(2016年度)報告要旨


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宮崎 康支(みやざき やすし) 関西学院大学大学院総合政策研究科

■報告題目

誰が発達障害者の自立と就労を求めているのか―新聞記事のディスコース分析

■報告キーワード

発達障害 / 自立 / ディスコース

■報告要旨

1.背景と目的

 2004年に制定された発達障害者支援法の改正案が2016年の通常国会において可決され(『福祉新聞』, 2016年6月7日)。改正内容には就労支援の強化や発達障害児の長期個別計画策定が含まれる。また、発達障害の定義に「社会的障壁」の文言が追加される(「法律第六十四号 発達障害者支援法の一部を改正する法律」, 2016)。発達障害者支援法は、自立支援の色彩を強めたといえる。
 日本の新聞において、「発達障害」の検索語を含む記事の数は西暦2000年前後に急増した(宮崎, 2014)。この時点で発達障害者は活字媒体において、自立を促される対象として扱われていた。そのディスコース(言説)を構築した要因はどこにあるのか。本報告はこの点を活字媒体の言語学的な定性分析により明らかにする。

2.方法
 日本における全国紙5紙(『朝日新聞』、『読売新聞』、『毎日新聞』、『日本経済新聞』、そして『産経新聞』)のデータベースにて「発達障害」の検索語により記事を抽出した。これらから事例を選択し、言語使用の背後にあるイデオロギーを探求する枠組みである批判的ディスコース分析(CDA) (Fairclough, 2003) により分析する。本報告においてはCDAにおける手法であるDiscourse-Historical Approach (DHA) (Reisigl and Wodak, 2016) を用いて、新聞記事におけるディスコースの歴史的な要素を抽出する。DHAの特徴は「(1)特定のディスコースにおける内容ないしトピックを把握し、(2)推論的な戦略を探索することと、(3)言語的意味および内容依存的な言語的実現を分析すること」(Reisigl and Wodak, 2016: 32)(註)にある。この手法は、言語の背後にある就労観や自立観を解明するには適切と考えられる。

3.考察と展望
 宮崎(2015; 2016)は、新聞記事における自立と就労のイデオロギーの発現を指摘した。そして、否定表現の作用が「否定」と「エンパワメント」という一見すると相反する概念の表現に用いられていることを明らかにしてきた。この報告においてはこれらの背景要因を明らかにし、提示する。

【註】この引用は報告申込者の邦訳による。

【引用文献】
Fairclough, Norman (2003). Analyzing discourse: textual analysis for social research.London: Routledge. (日本メディア英語学会メディア英語談話分析研究分科会訳(2012). 『ディスコースを分析する』くろしお出版)
『福祉新聞』(2016年6月7日).「改正発達障害者支援法が成立 就労定着の強化へ」 < http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/13069 > (2016年7月30日)
「法律第六十四号 発達障害者支援法の一部を改正する法律」(2016年6月3日).『官報』号外第123号, 平成28年6月3日, pp. 77-78.
宮崎康支(2014).「新聞記事データベースにみる発達障害とその周辺概念の変遷」障害学会・第11回大会ポスター報告. (2015年12月15日)
宮崎康支(2015).「新聞記事における『発達障害』概念の批判的ディスコース分析」『社会言語科学会第36回大会発表論文集』, pp. 118-121.
宮崎康支(2016). 「『発達障害』概念と否定表現―新聞記事コーパスにおける計量分析から―」『国立国語研究所時空間変異研究系公開研究発表会予稿集』, pp. 55-64.
Reisigl, Martin & Wodak, Ruth (2016). The discourse-historical approach (DHA). In Wodak Ruth & Meyer, Michael (Eds.), Methods of Critical Discourse Studies (3rd. ed.), pp. 23-61. London: SAGE.

【倫理的配慮について】
 本研究は活字媒体のテクストを分析するものである。データおよび引用文献の箇所を明記し著作権に配慮する。引用データに私人および地名の固有名詞が含まれる場合は仮名とする。仮名に置き換えた場合はその箇所を明記する。また、報告申込者が所属する関西学院大学の倫理基準を遵守する。本研究はヒトを対象とした医学的・行動学的研究や実験研究などに該当しないため、同大学による倫理審査の対象外であると報告申込者は判断している。



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