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障害学会第13回大会(2016年度)報告要旨


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西田 玲子(にしだ れいこ)

■報告題目

中途障害者への合理的配慮―解雇制限と合理的配慮の関係を中心に

■報告キーワード

合理的配慮,解雇制限,労働能力等

■報告要旨

 本報告は,公表されている判例や論文に基づき構成しているため,特定の個人や団体に行った調査結果などは含まない。著作権に配慮し,出典を明確にする。

 雇用された時点では障害者でなかった従業員が,雇用期間中に障害者となった場合に焦点を当てて,合理的配慮を含め,事業主に求められる対応を検討し,報告する予定である。
 解雇制限があることは日本の労働法の特色である。これまでも健康上の問題を抱えた従業員の解雇は一般労働法の下で制限されてきた。従業員の解雇を回避するための取組みに,合理的配慮が関わるようになる点が,改正障害者雇用促進法の施行で大きく変わるところである。しかし,解釈通知や合理的配慮指針等では,解雇制限と合理的配慮の関係について明らかにされていない。
 基本的に労働者には職務遂行能力が求められる。「労働能力等」に基づき雇用平等を確保しようとする方針は差別禁止指針でも明確に表れている。また,解雇制限も,いずれは従前の職務を遂行できるようになる見込みがあることを前提としたもので,これまでも復職を希望する従業員には,従前の職務もしくは別の現実的に可能な職務での職務遂行能力が求められてきた。合理的配慮指針でも「中途障害により,配慮をしても重要な職務遂行に支障を来すことが 合理的配慮の手続の過程において判断される場合に,当該職務の遂行を継続させること」は求められないと明示されている。
 このことから考えられる問題として,中途障害者が雇用を維持するには,どの程度の職務遂行能力が求められるのか,合理的配慮はどのように職務遂行能力と関わるのかが挙げられる。たとえば,「重要な職務遂行に支障を来す」ことと「従前の職務の遂行ができない」ことに違いがあるとすれば,「重要な職務遂行に支障を来す」わけではないが,「従前の職務を100%できるわけではない」場合には,合理的配慮として労働義務の内容を変更することを求められるのかという検討が必要となる。その他,これまでは従前の職務を遂行できるようになるまで一時的に軽作業を与えていたことが,合理的配慮として恒常的に求められるのか,その提供の可否は,過重な負担との関係から判断されるものなのか等,明らかにすべき点があると考えられる。
 そこで,中途障害者に求められる職務遂行能力を切り口に,解雇回避努力と合理的配慮の関係を検討し,実際の場面を想定しながら,どのような合理的配慮が必要なのか,検討して報告する予定である。

参考文献
 長谷川珠子「健康上の問題を抱える労働者への配慮―健康配慮義務と合理的配慮の比較」日本労働研究雑誌601号(2010)46頁



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