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障害学会第13回大会(2016年度)報告要旨


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清原 舞 (きよはら まい)  関西福祉科学大学社会福祉学部

■報告題目

スウェーデンにおける障害者の地域生活支援システム構築の現状と課題―イェテボリ市の実践を通して

■報告キーワード

障害者福祉、地域生活支援、スウェーデン

■報告要旨

1.研 究 目 的

スウェーデンにおける障害者福祉政策の発展を見ると、今でこそ、「社会福祉国家のモデル」として知れ渡っているが、障害者を保護し、隔離する政策を経て、現在のような障害者の権利を認める政策に転換していった経緯がある。そこには、当事者団体の働きかけが政策に大きな影響を与えたことは言うまでもなく、障害があっても地域での生活が可能となっている。
 本研究は、1994年、機能障害者のための援助及びサービスに関する法律(Lag om stöd och service till vissa funktionshindrade : 以下LSS法)の施行後、20年以上経過した中で、1つの市の取り組みを基に、障害者の地域生活を支えるシステムについて焦点を当てている。そして、地方自治体が障害者福祉政策を実践する中での現状と課題を具体化し、今後、日本における障害者福祉の地域生活支援の構築の可能性を探究することを目的とする。 

2.研究の視点および方法
 2016年2月、イェテボリ市における障害者福祉サービスの新プロジェクトについての職員対象にインタビュー調査を約2時間実施した。また、新プロジェクトについての行政報告書及びデータを参考にし、障害者の地域生活を支えるシステム構築について分析・検討を行った。

3.倫理的配慮
 本研究においては、関係機関から調査結果の使用に関する了解を得るとともに、個人が特定できないように配慮した。インタビューに関わる内容については、関係者の了承を得、ICレコーダーに録音した。その他、研究を通じて関係者の人権への配慮を怠ったり、個人の尊厳や関係機関の信用を損ねたりすることがないよう配慮し、知り得た個人情報等については個人情報保護法等の関連する法規を守り、プライバシー保護を徹底するなど最大限の注意を払った。

4.研 究 結 果

 スウェーデン・イェテボリにおいて、2011年から開始された、市独自の障害者福祉サービスに関するプロジェクトLots för barn och vuxna med fuktionsnedsättningの内容と課題について検討した。診断の有無や障害の程度に関係なく、あらゆる相談を受け付け、法律やサービスについての情報提供・助言を行い、サービスに繋げるなど、ワンストップで相談を受け付ける公的事業であるが、「家族を含めた支援」、「本人の意思を聴く支援」、「国・都道府県・市の協働」「他分野・他職種との連携」を地域での支援システム構築において必須であるとした。

5.考 察

 スウェーデンにおいては、現在、移民・難民の問題も含め、障害者福祉についても多様で複雑なニーズが増加しているといえる。そのような現状において、正確な情報を提供し、サービスに繋げていくことは必須である。ワンストップでありとあらゆる相談を受け付け、情報を提供するというこのプロジェクトは、非常に重要な役割を持ち、特に以下の点についての役割が期待されると考えられ、また日本においても以下の視点を重視される必要があるだろう。
(1)ワンストップでの情報提供により、当事者及び家族の精神的負担の軽減にも繋がる
(2)多様なニーズに柔軟に対応できる
(3)迅速にサービスに繋げることが可能になる
(4)一人ひとりの当事者や家族の抱えているニーズを理解することで、障害に対する知識、専門性が深まり、個別支援へと繋げていくことが可能になる



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