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障害学会第12回大会(2015年度)報告要旨
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野崎 泰伸 (のざき やすのぶ) 天理医療大学
■報告題目
障害を理由とする差別の定義と合理的配慮に関する哲学的考察
■報告キーワード
障害者差別 / 合理的配慮 / 哲学
■報告要旨
障害者権利条約、障害者差別解消法、および各自治体による障害者差別解消条例(名称は各自治体による)においては、障害を理由とする差別(以下「障害者差別」とする)の定義と合理的配慮について記されている。障害者差別の定義をめぐっては、それをどう定義するか、また、差別の範囲に「障害者間差別」「間接差別」を含めるのかが論点となる。次に、合理的配慮をめぐっては、差別的取扱いにおける正当・不当な理由とは具体的にどのようなものか、また、合理的配慮における過重な負担とは具体的にどのようなものかが論点となる。それらの論点について、差別解消条例の骨格ともいうべき基本理念について各県の条例等を比較対照しながら、哲学的な考察を行うのが本報告の課題である。
障害者差別の定義に関して、権利条約の第2条では、以下のように定められている。
「「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。
「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」。
また、差別解消法においては、その第7条に「行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない」、また第8条に「事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない」とあるが、これは差別の明確な定義ではなく、くわえて、法構造上、障害者間の差別や間接差別(関連する差別を含む)は対象とならないと考えられる。
次に、合理的配慮に関して、「不当な差別的取扱い」をめぐっては、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 第2」における「不当な差別的取扱い」の項で、「正当な理由に相当するのは…客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。行政機関等及び事業者においては個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益及び行政機関等の事務・事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的に判断することが必要である。行政機関等及び事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るように努めることが望ましい」とある。また、「合理的配慮における過重な負担」をめぐっては、同「合理的配慮」の項において、その基本的な考え方として、「行政機関等及び事業者の事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある」と記される。また「過重な負担」に関しては、「事務・事業への影響の程度、実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)、費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況」が考慮されるべきであるとする。つまり、不当な差別的取扱いに関しては、正当か不当かを判断する明確な基準はなく、個別事案ごとに判断する、判断のための視点として例示されるのは、障害者、事業者、第三者の権利利益と、行政機関等の事務・事業の目的・内容・機能の維持等であると考えられる。また、合理的配慮における過重な負担に関しては、事業を損なわない範囲で、均等な機会提供を目的に行うことを基本としたうえで、過重な負担を検討する5項目はあるが、明確な基準はないと考えられる。
本報告では、これらを踏まえたうえで、障害者差別の定義に関して、また、合理的配慮の定義をめぐる「不当な差別的取扱い」、「過重な負担」に関して、法的観点ではなく、哲学的観点から考察する。そのような思索が、自治体において新しく差別解消条例を制定する際においても、有用であると考えられるからである。
なお、本報告は、直接人物を対象とした研究ではないため、倫理的配慮は不要であると考える。
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