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障害学会第12回大会(2015年度)報告要旨
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林 桃子 (はやし ももこ) 長崎純心大学大学院 人間文化研究科 福祉文化研究分野
山田 幸子 (やまだ さちこ) 長崎純心大学
■報告題目
大学を卒業する「軽度」肢体不自由者の就職活動及び進路選択のプロセス
■報告キーワード
「軽度」肢体不自由 / 就職活動 / 進路選択
■報告要旨
1. 研究の背景
障害を持つ大学生の就職活動には大学におけるキャリア支援が重要視とされると考えられる。石田(2011)によると大学におけるキャリア支援には
①職業社会で求められる人間形成支援
②就職活動支援の二つの機能
が存在すると述べている。更に障害学生の場合、卒業後の人生を“障害とどう向き合い、どう障害と生きていくか”という大きなテーマの中で、社会で充分に通用する知識と技能の獲得を在学中に行う必要があり、つまり以上の2つに加えて
③自己受容と能力開拓
以上の3点がキャリア支援において必要だと述べている。これは大学の「キャリア支援室」で行われる就職活動支援からだけではなく、大学生活による学びから得ることができるものである。
また石田(2011)は障害学生には、大学入学までに周囲の過剰な配慮や逆に関わりのなさがあり、このため、自己の能力を適正に理解できていない学生がいると推察し、キャリア形成には現在の自己の力量を正しく把握していることが前提であり、このための支援であると結論付けている。このため、障害学生のキャリア形成には本人の努力及び周囲の関わりが重要視されることが示唆される。
2. 研究目的と意義
「障害学生において具体的な就職活動支援、さらにはキャリア支援についての蓄積がないため、多くの大学で模索中というのが2011年の現状である」と殿岡(2014)は述べている。本研究では、実際に障害を持ちながら就職活動を行い、内定を得た者に就職活動中の出来事を尋ね、そのプロセスを描くことを目的とする。研究意義として、これから就職活動をする障害学生のモデルとし、困難の乗り越え方や支援の求め方を示す。
3. 研究方法及び分析方法
対象者は本調査への協力への同意を得られたAさん1名。プライバシーの保護、答えたくない質問には答えなくても良いなどの所定の倫理的配慮について伝えた上で同意書を得た。
本調査では1人の対象について探っていくこととした。方法としては面接場面において研究者と対象者が話をし、互いに確認をし合いながら語りを元に、一緒にTEM図を描いていく作業形式とした。現状では対象者宅にて面接を3回行った。質問の内容として「就職活動が始まって内定を得るまでの過程」「なぜ内定を得ることができたか」「障害を持ちながら就職活動することの困難さはあるか」などを中心とした。
本調査においては複線径路・等至性モデル(Trajectory Equifinality Model:以下TEM)での分析を行った。1名という人数である意義ついて、安田・サトウ(2012)が主張する「1・4・9の法則」に従い、1名を丁寧に分析することにより、個人の径路の深みを探ることができるとした。
4. 結果及び考察
内定を得ることに影響を与えた要因について検討するため、就職活動が始まり内定を得るまでのプロセスのTEM図を描いた。結果として【周囲の人の支え】【障害について開示することが可能となるような促し】【困難な状況に対して自ら行動を起こす】などのことによりAさんは内定を得ることが可能になったと考えられる。全体像及びその他の要因については当日報告する。
参考文献
石田久之(2011).障害学生のキャリア形成支援 ノーマライゼーション10月号
安田裕子・サトウタツヤ(編著)(2012).TEMでわかる人生の径路 質的研究の新展開 誠信書房
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障害学会第12回大会(2015年度)
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