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障害学会第12回大会(2015年度)報告要旨
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西田 玲子 (にしだ れいこ) 筑波大学大学院
■報告題目
合理的配慮と休職期間──休職期間終了による退職扱いの有効性
■報告キーワード
合理的配慮 / 休職期間の定め / 健康配慮義務
■報告要旨
本報告は、既に公表されている判例や論文に基づき、内容を構成しているため、特定の個人や団体へ不利益をもたらすことはない。著作権に配慮し、出典を明確にする。
精神障害による労災請求件数、支給決定件数ともに年々増加しており (*1)、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害を理由に休職する人も多い。そのような中、就業規則等に定められた休職期間を過ぎた時点で、就業規則に基づき退職扱い(もしくは解雇)とすることの可否について、裁判で争われてきた (*2)。
精神障害を発症した労働者は、療養のために休職することができる。休職期間に関しては、期間の定めのない雇用(いわゆる正規雇用)と有期雇用(いわゆる非正規雇用)で一般には異なる就業規則が適用されるため、取得できる期間には違いがある。ただし、正規雇用、非正規雇用を問わず、休職期間満了の時点で相当期間内に休職事由が消滅することが見込める場合には、雇用維持のための手段を講じることが信義則上使用者に求められる (*3)。
業務上疾病の療養のために休職している期間には、解雇制限がある (*4)。他方、症状が固定された場合、あるいは、私傷病による休職の場合は、休職期間満了による退職扱いが認められてきた (*5)。
改正促進法により、今後は私傷病でも業務上疾病でも障害を理由とする休職は、合理的配慮として認められることになる。また、復職に際して、労働者が合理的配慮を希望する場合には、短時間勤務を認めるなど、各種配慮を提供する必要がある。
本報告では、これまで行われてきた復職の際の配慮、すなわち、軽作業を割当てたり、短時間勤務を認めたりすること以外にも、合理的配慮として何が求められるのかを検討し、報告したい。さらに、中途障害者で主要な業務を遂行できなくなった者に対して、配転等を含め合理的配慮により雇用を維持する努力が求められるため、休職期間満了による自然退職が今後どのように変わる必要があるのかについても報告する予定である。
注
(*1) 厚労省平成27年6月25日報道発表資料「平成26年度『過労死等の労災補償状況』を公表」
(*2) 東芝(うつ病・解雇)事件・最2小判平26年3月24日(労判1094号22頁)、東京高判平23年2月23日(労判1022号5頁)休職期間満了による解雇を無効と判断した高裁判決が確定。
(*3) 全日本空輸(退職強要)事件・大阪地判平11年10月18日(労判772号9頁)
(*4) 労基法19条1項。使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
(*5) エールフランス事件・東京地判昭59年1月27日(労判423号23頁)期間満了の翌日など一定の日に労働契約が自動終了することを就業規則に定めて明示する自然退職の規定について、休職期間満了日になお休職事由が消滅していない場合に、期間満了によって当然に復職となったと解した上で改めて使用者が当該従業員を解雇するという迂遠な手続きを回避するものとして合理性を有する。
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