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障害学会第11回大会(2014年度)発表要旨


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天畠 大輔 (てんばた だいすけ) 立命館大学大学院先端総合学術研究科

■報告題目

発話困難な重度身体障がい者の動画配信利用―障害学会第12回大会への提言

■報告キーワード

Skype / 発話困難な重度身体障がい者 / 多様性

■報告要旨

 2013年の第10回障害学会早稲田大会の日、都内で記録的な大雨となったことを皆さんは覚えているだろうか.あの日、私は大雨のために学会に参加出来なかった.そして、今回の第11回障害学会沖縄大会も参加できるかわからない.私が参加するには渡航費や宿泊代だけで十数万円を捻出しなければならないからだ.天候や経済的な問題は誰にとっても避けがたいことだが、私には他の人とは異なる事情がある.それは、私は「見えない」「歩けない」「話せない」という重度障がいをもつ大学院生だからだ.学会に参加出来なかった早稲田大会のあの日から「学会の動画配信がさえあれば良かったのに」と思い続けてきた.本発表はこの問題意識に端を発している.

 私は現在、東京都武蔵野市で24時間の介助を使って暮しながら研究活動をしている.所属先の立命館大学大学院は京都にあるが、体力的にも経済的にも、東京から京都まで通学することも引っ越す事も慣れた介助者がいなければできない.そのため、大学院の講義はSkypeをつかって立命館の教室と東京の自宅を繋いで、音声と映像を双方向で中継して受講している.このSkype受講という新しい支援方法については「発話障がいを伴う重度身体障がい者のSkype利用――選択肢のもてる社会を目指して――」にまとめている(天畠, 村田,嶋田,井上 2013).私の様な重度障がい者が外出するには、天候や介助者の確保等、様々な条件をクリアしなければならないが、Skypeのメリットとして、移動にまつわる経済的負担が軽減できることが挙げられる.私が東京から京都の立命館に行って講義を受けた場合と、Skype通信を利用して受講した場合の費用を比較した.その結果、介助者3名と共に2泊3日で集中講義を受講した際に、交通費、宿泊費、人件費など総じて27万円がかかる.これに対して、Skypeで受講した場合ではPC・カメラ・マイク等の機材の購入費と大学側のアシスタントの人件費を含めて約7万円で済んだ.Skype利用は私の様な重度障がい者にとって移動の負担、経済的負担、体力、介助の確保の問題などを勘案した時に有効な支援ツールとなっているといえる.(天畠,立岩,井上,鈴木2011)

 実際に外出をすることと,Skypeを利用した参加を同列に扱うことはできない点は留保すべきだが、もちろん,自由に外出できるのであればそれに越したことはない.しかし,外出にかかる負担が重い重度身体障がい者にとって、Skypeを通じた参加機会の確保は,障がい者本人の行動の幅を広げる補完的手段としてみた場合に非常に有用なツールである.
 さらに触れておきたいのは、立命館大学の中で重度障がいをもつ私への「特別な対応」として始まったSkype受講は、機材や環境が整ったことでユーザーの広がりを見せていったことだ.それは、同研究科内に在籍している多様な院生――例えば、子どもを抱えた女性研究者や遠方にフィールドワーク中の院生など、様々な条件の中で研究を行う院生が講義を受講することを可能にするツールとなった.本研究では5年間のSkype受講の取り組みを整理し、発話障がいを伴う重度身体障がい者がskypeを利用することの有用性を考察し,その可能性と限界を提示することにある.そして、第12回障害学会にむけて、動画配信は多様な障害学研究者の学会へのアクセスを可能にするツールとなり得ることを提言したい.

長谷川貞夫・雷坂浩之 (2006) テレビ機能付き携帯電話による視覚障害者の遠隔支援の研究. ノーマライゼーション障害者の福祉,26,(295) ,160.
松原洋子・水月昭道・日高友郎 (2007) インターネットを利用したALS患者集会の試み.立命館人間科学研究, 15, 141-156.
天畠大輔・村田桂一・嶋田拓郎・井上恵梨子 (2013)「発話障がいを伴う重度身体障がい者のSkype利用――選択肢のもてる社会を目指して――」立命館人間科学研究23号,13-28.
天畠大輔・立岩真也・井上恵梨子・鈴木寛子 (2011)「インターネットテレビ電話を活用した在宅療養者の社会参加について~高等教育における重度障害学生への支援の取り組みから~」勇美記念財団



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