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障害学会第13回大会(2016年度)報告要旨


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森 壮也 (もり そうや) JETROアジア経済研究所

■報告題目

障害女性や障害児は途上国でどのようにリソースから周縁化されているのか―2016年度フィリピン南部の都市部と農村部における障害女性と障害児のいる家計の生計調査から

■報告キーワード

障害と開発,貧困,

■報告要旨

 世界銀行・WHOは,世界の貧困者の20%が障害者であるという推計を行っている(WHO 2011)。しかし,そうした貧困者が多く住まう開発途上国の障害者の生計状況,貧困状況については,具体的な調査による研究は数少ない。JETROアジア経済研究所では,開発途上国の障害者の貧困状況を明らかにしようと,これまでいくつかの現地での実態調査を行って来た。これまで,フィリピンのルソン島にあるフィリピン最大の都市であるマニラ首都圏での調査(2008年)および同島南部の農村部ロザリオでの調査(2010年)によって,おおよその状況を明らかにし,そこから得られた成果を森(2010),森・山形(2014),Mori, et. al. (2015) で明らかにしてきた。最も特徴的な成果としては,一般的な貧困率と比して障害者家計の貧困率が4倍近くという障害者の貧困率の高さである。
 さらに,この一連の研究で明らかになってきたのは,アジア随一のジェンダー平等国として知られるフィリピンにおいて(森2015a),障害女性が障害男性の三分の一という所得格差とその背景にある教育年数の男性障害者に比した短さである。
 また,森(2015b)は,同国の障害児の置かれている教育環境の劣悪さを制度面から明らかにしたが,この背景には彼らの教育のために割かれるべきリソースが極度に不足している現状がある。
 これら障害女性と障害児の置かれた状況は,社会的要因によってどれだけ説明可能なのか,そうした課題に答えるため,2016年6-7月にフィリピン南部のヴィサヤ地方において再度,障害女性と障害児に焦点を当てた生計調査が現地研究所の協力を得て実施した。フィリピンの伝統社会が色濃く残る同地方では,ルソン島に比べて女性に対する社会的な圧力も大きく(Verceles 2014),子供たちの教育に割かれるリソースも少ない(森 2015b)ことが知られている。こうした状況下で,障害女性と障害児の状況はさらに悪いものとなっているのか,またその具体的要因としてはどのようなことが考えられるのか,本報告では,特に障害学の観点から,リソースの状況や使われ方,社会関係の状況に特に焦点をあてて,ルソン島での状況と比較しながら,報告する。
 なお,これまでのすべてのフィリピンにおける障害家計調査は,フィリピン開発庁(The National Economic and Development Authority,NEDA)の下にあるフィリピンの現地開発研究所であるフィリピン開発研究所(Philippine Institute for Development Studies, PIDS)を通じてフィリピン政府統計機構(National Statistics Authority, NSA)により調査計画及び倫理的配慮についても事前に承認を得た上で厳重なデータの管理及び対象標本障害者家計への説明と同意文書への署名を経た後に実施されている。また調査の実施にあたっては,現地地方自治体(Local Government Units, LGUs)及び各地域の行政区域ごとの障害当事者団体の協力を得ている。

倫理的配慮

 文献・資料を用いた記述については、『障害学研究』執筆要項を遵守する。インタビュー調査については、プライバシー保護に努め、フィリピン政府フィリピン統計局(Philippine Statistics Authority)のガイドラインに沿って,すべての回答について調査協力者の同意を文書で得ている(こうした同意を得る正規の手続きを経ていない場合には,フィリピンでは,地方自治体から調査の母集団データを標本抽出のために得ることはできない制度となっている)。また本調査については,フィリピン政府の経済開発庁(National Economic and Development Authority)管轄下のフィリピン開発研究所(Philippine Institute for Development Studies)とJETROアジア経済研究所との 海外共同研究であり,双方の倫理規定に沿った審査を経た上で実施が承認されたものである。

【主要参考文献】

森壮也編(2010) 『途上国障害者の貧困削減-かれらはどう生計を営んでいるのか』岩波書店。
森壮也・山形辰史(2013)『開発経済学の挑戦IV 障害と開発の実証分析-社会モデルの観点から』勁草書房。
Soya Mori, Celia M Reyes, Tatsufumi Yamagata, eds. (2015) Poverty Reduction of the Disabled Livelihood of persons with disabilities in the Philippines, Routledge.
森壮也(2015a)「フィリピンにおける「ジェンダーと障害」小林昌之編『開発途上国の女性障害者』アジア経済研究所調査研究報告書(中間報告),(http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/Report/2014/pdf/C29_ch5.pdf)。
_______(2015b)「フィリピンにおける障害者教育法」小林昌之編『アジアの障害者教育法制-インクルーシブ教育実現の課題-』アジア経済研究所,pp.111-144。
Verceles, Nathalie Africa(2014)Livelihood Practices of Women in the Informal Economy: Forging Pathways Towards a Feminist Solidarity Economy,University of the Philippines : Ph.D. Dissertation.
World Health Organization (2011) World report on disability, WHO.



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