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障害学会第13回大会(2016年度)報告要旨


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臼井 久実子 (うすい くみこ)  障害者欠格条項をなくす会
瀬山 紀子 (せやま のりこ) 障害者欠格条項をなくす会

■報告題目

障害者にかかわる欠格条項の現状 法令調査結果報告

■報告キーワード

障害者/欠格条項/調査

■報告要旨

 障害者欠格条項とは、障害を理由に資格や免許や行為を制限するもの(法律等)、自治体の議会傍聴や公共施設の利用等を制限するもの(議会規則・地方条例)などがある。削除、廃止を求める取組は1950年代に始まり2000年前後に大きな山場を迎えた。
 2001年6月に「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律」が成立し、それまで「資格や免許を与えない」心身の機能障害にかかわる絶対的欠格条項があった法令は、「資格や免許を与えないことがある」相対的欠格条項に、あるいは削除、廃止に、見直された。見直しは個別・断続的にもおこなわれてきた。他方、成年被後見人・被保佐人等に対する欠格条項や、免許等の交付後の欠格条項については、政府においては、課題化も取組もおこなわれていない(註1)。
 残されている障害者欠格条項の現状を明らかにして削除・廃止等の検討に役立てる目的で、2016年3-6月に調査を実施した。
 方法は、2種類の法令データベース(註2)を使用して、法律・政令・省令を対象に、検索語句で挙がる全ての法令の条文を確認し、障害者にかかわる欠格条項に該当するものを抽出した。検索語句は、成年被後見人、心身の障害、精神障害、視覚障害、聴覚障害など多数である。比較には前回2009年調査データを再チェックしたものを用いた。以下の[]内は2009年調査の法令数である。
 調査の結果、法令数は計506法令[485]で、分類A「資格や免許の交付にあたっての欠格条項」では、成年被後見人、被保佐人211[193],心身の障害72[71],精神障害73[62],視覚障害32[32],聴覚・言語障害28[28]となっている。分類B「免許等の交付後の欠格条項」は362[361]、分類C「資格や免許に限らない権利の制限」は25[26]である。
 2009年調査と比較すると、37法令が追加された一方、廃止されるか又は欠格条項に該当しなくなったものが16法令ある。追加された37法令のうち18法令は成年被後見人・被保佐人への欠格条項で、2010年以降に公布された法令が大半である。障害別では、視覚障害、聴覚言語障害にかかわる相対的欠格条項は2009年以降の増減・変化がなく、精神障害は62法令から73法令へ11法令増加している。
 本報告は、上記A・B・Cの分類による概要と、各分類に該当する法令の名称・条・公布年等の基礎的なデータ(数が多いものは一部)、及び、加えた分析内容について展示する。
 なお、上述のとおり、インターネット上で公開されている法令データのみを使用した調査であり、倫理的配慮を必要とする内容は扱っていない。

註1 成年被後見人の参政権を認めない公職選挙法第11条第1項第1号(旧)は、参政権を剥奪された障害者が原告となった裁判を経て削除された。地方条例においては2016年3月に明石市が成年後見制度の利用の有無にかかわらず職員の採用・雇用継続をできる条例を制定した。

註2
「法令データ提供システム」(総務省)http://law.e-gov.go.jp/
「法庫」有料版      (民間) http://www.houko.com/



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