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障害学会第13回大会(2016年度)報告要旨


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青木 千帆子 (あおき ちほこ)

■報告題目

合理的配慮の提供に際し調整に当たる役割に関する情報の集約と分析

■報告キーワード

障害者差別解消法、合理的配慮、コーディネーター

■報告要旨

1. 目的

 本調査を通じ、環境整備や合理的配慮の提供に際し調整に当たっている人・組織について情報を集約し、課題と展望を明らかにする。

2. 背景

 2016年4月より障害者差別解消法が施行された。この法で定められている合理的配慮は、サービスの提供者と利用者による対話を前提としている概念である。同法に関する基本方針においては「双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるもの(★1)」と説明されている。では、建設的な対話とはどのようなものか。それはどのようにして可能となり、促進されるのだろうか。
 同法第14条では、「国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする(★2)」ことが規定されている。「紛争の防止」という記述からは、同法が定める相談体制や相談窓口において、紛争が起きた後にそれを解決する役割だけではなく、紛争に至る前の調整をする役割も期待されていると考えられる。
 合理的配慮の提供を定める法律が先行して施行されているアメリカでは、ADAコーディネーターと呼ばれる職務の者が、合理的配慮の提供に際し調整に当たる役割を担っている。また、イギリスでも、平等人権委員会や地方自治体、民間団体が独自のガイドラインを準備して合理的配慮の提供や対話に備えている(★3)。
 日本においても既に、環境整備や合理的配慮と呼びうる取り組みを実践している組織や人々は存在している。しかし、アメリカやイギリスにみられるような調整に当たる役割やガイドラインの充実は、より一層期待されるところである。
 円滑な合理的配慮提供のため、紛争に至る前に調整する役割やガイドラインを充実させることを想定する場合、現行において誰がどのように調整を行っているのかを把握しておくことが必要である。
 そこで本調査では、合理的配慮の提供に際し調整に当たっている人々や組織が、どのような肩書や職務の者で、どのような財源や法的根拠の下で日々の実践を継続しているのかを、できるだけ網羅的に把握することを目指す。

3. 方法

 発表申し込み時点で想定している対象は、次の通りである。
(1) 特別支援教育コーディネーター
(2) 障害学生支援コーディネーター
(3) 教育委員会 担当者
(4) ジョブコーチ
(5) 障害者就業・生活支援センター 相談員
(6) ハローワーク 相談員
(7) 地方自治体障害者福祉所管部署、その他関連部署 担当者
(8) 地方自治体の差別禁止条例等で指定されている相談員
(9) 社会福祉協議会、基幹相談支援センター、その他相談支援事業所 相談支援専門員
(10) 地方法務局 人権擁護委員
 それぞれの対象について法的根拠、業務内容、財源等、関連する情報をインターネットや文献資料を通して収集し、整理する。また、当該職務に当たる者に対し、具体的な実務についてインタビュー調査を実施する。対象の範囲が広く、同一の職務であっても所属する組織の属性や規模によって業務形態が異なるため、網羅的な聞き取りは困難と思われるが、可能な範囲で聞き取りを行う。
 また、調査の過程では、調査の内容および規模を考慮した適切な個人情報の収集、利用および提供を記載した「科学の健全な発展のために(★4)」を遵守する。

4. 結果
 結果及び考察は当日会場にて報告する。

5.注
★1 内閣府 2015 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/kihonhoushin/honbun.html
★2 内閣府 2013 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65.html
★3 内閣府 印刷中 「平成27年度障害者の社会参加推進に関する調査研究 合理的配慮提供に際しての合意形成プロセスと調整に関する国際調査」
★4 日本学術振興会 「科学の健全な発展のために」https://www.jsps.go.jp/j-kousei/data/rinri.pdf



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