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障害学会第11回大会(2014年度)発表要旨


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中根 成寿 (なかね なるひさ) 京都府立大学公共政策学部

■報告題目

障害者総合支援法における地域系サービスの支給時間・利用率調査

■報告キーワード

障害者総合支援法 / 支給決定量 / サービス利用率

■報告要旨

1. 本報告の目的

 本報告の目的は、障害者総合支援法における地域系サービスの支給決定量の自治体間比較、ならびに各都道府県の国保連に実際に請求された請求実績と支給決定時間との比較を行うことによる、サービス利用率の把握を行うことである。本報告における地域系サービスとは「居宅介護」「重度訪問介護」「行動援護」「生活介護」「就労継続支援」「共同生活介護」を指す。
 本報告で考慮する変数は3つある。まず利用者が相談支援事業所を通じて市町村に対してサービスの利用意向の聴取の段階で要求する申請時間(α)である。次に利用者の申請時間に対して、市町村が決定する個別サービスの月ごとの「支給決定量(β)」がある。さらに支給決定量のうち、実際に利用者が事業所を通じて支援を受けるサービス利用量(γ)」が存在する。申請量(α)、支給決定量(β)、利用量(γ)の関係はα>β>γになり、これらの関係が逆転することはほぼありえない。
 本調査で明らかにしたいことは、3点である。1点目は、自治体間の各地域系サービスの支給決定量の比較である。また支給決定の人数を調査することにより、自治体ごとの総支給決定量の比較だけではなく、利用者1人あたりの平均支給量を明らかにする。2点目はそれぞれ自治体の地域系サービスでもっとも長く支給を受けている利用者の利用時間の把握である。3点目は、支給決定時間と、国保連請求実績から利用量との比較を行い各サービスの利用率を明らかにする。

2. 調査方法

 本調査の対象自治体は、2013年(平成25年)2月現在で、重度訪問介護の国保連請求者が200人以上存在する都道府県の市・区とし、郡部は除いた。これは中根(2012)の調査において郡部のほとんどが、重度訪問介護の利用者が0人であったためである。対象となった都道府県は、北海道、埼玉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県である。対象自治体となったのは363自治体である。調査票は2種類用意し、調査票Aは支給量を問うもの、調査票Bは国保連への請求量を問うものとした。返却されたのは134自治体(政令市4、政令市の区33・特別区13、中核市・特例市16、一般市68)であり、回収率は36.9%であった。

3. 結果

3.1. 重度訪問介護支給決定量/利用率について
 重度訪問介護の利用者1人あたりの平均支給時間は227.7時間で、自治体規模別では特に有意な差はなかった。この月227.7時間は1日あたりで換算すると7.59時間の支給であり、障害支援区分6の国庫負担基準約44万円(平成24年度水準、1時間辺りの平均単価1900円で算定)に近接しており、重度訪問介護支給決定は自治体規模にかかわらず、国庫負担基準が支給決定量の基準として機能していることがうかがわれる。

3.2. 居宅介護支給決定量/利用率について
 居宅介護の月積算支給時間平均は政令市・特別区で22959.4時間、中核市・特例市で17164.6時間、一般市で4198.6時間、月積算支給人数平均は、政令市・特別区で929.9人、中核市・特例市で555.1人、一般市で170.4人であった。利用者1人あたりの月支給時間平均は、政令市・特別区で28.9時間、中核市・特例市で33.2時間、一般市で25.6時間であった。

3.3. 行動援護支給決定量/利用率について
 行動援護の自治体規模ごとの月積算支給時間の平均は、政令市・特別区が1550時間、中核市・特例市が1151.4時間、一般市が331.8時間、月積算支給人数の平均は政令市・特別区が28.6人、中核市・特例市が38.4人、一般市が10.4人であった。利用者1人あたりの支給時間の平均は、政令市・特別区で70.9時間、中核市・特例市で35.7時間、一般市で34時間であった。

3.4. 生活介護支給決定量/利用率について
 生活介護の月積算支給日数平均は政令市・特別区で13866.4日、中核市で16187.7日、特例市で11349.3日、一般市で5943.7日であった。月積算支給人数平均は、政令市・特別区で624.7人、中核市で749.2人、特例市で530.4人、一般市で266.1人であった。利用者1人あたりの月支給時間平均は、どの自治体規模でも約22日であった。

3.5. 就労継続支援支給決定量/利用率について
 就労継続支援の月積算支給日数平均は政令市・特別区で11062.4日、中核市・特例市で10216.6日、一般市で4876.7日であった。月積算支給人数平均は、政令市・特別区で570.4人、中核市。特例市で506.1人、一般市で219.7人であった。利用者1人あたりの月支給日数平均は、自治体規模に関わらず約22日であった。

3.6. 共同生活介護支給決定量/利用率について
 共同生活介護の月積算支給日数平均は政令市・特別区で6938.2日、中核市・特例市で4171.7日、一般市で2879.6日であった。月の積算支給人数平均は、政令市・特別区で251.7人、中核市・特例市で140.5人、一般市で87.4人であった。利用者1人あたりの月支給日数平均は、自治体規模に関わらず約30日であった。

4. 考察

 学会当日の発表では、1)サービスごとの利用率の差について、2)都市規模別の支給決定平均時間の差異について、3)支給決定プロセスが地域生活における柔軟性や自律性を剥奪しているのではないか?の3つの論点について考察を行う予定である。

5. 文献

中根成寿, 2012, 「重度訪問介護支給決定時間から見る障害者の地域生活支援制度の検討 : 京都府における重度訪問介護支給決定時間に関する調査から」, 『福祉社会研究』13:101-109.



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