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2015年8月27日

安全保障関連法案の廃案を求める

障害学会理事会

 障害学会は、従来の医学的視点ではなく、社会・文化の視点から障害を研究する障害学(Disability Studies)の発展・普及を目的とした研究組織である。安倍晋三内閣が今国会に上程している「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」及び「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」、いわゆる安全保障関連法案に私たちは反対し廃案を求める。理由は次の通りである。

  1.  同法案は日本国憲法に反し、立憲主義を歪めるものである。
     同法案は、平和主義を基本原理とし、第9条で戦争放棄を定める日本国憲法とは相容れない。時の政権が恣意的に憲法解釈を変更し、違憲の法律を作ることは、憲法を事実上空文化し、憲法が示す民主主義、思想信条の自由、基本的人権の保障を危うくする。その結果、国民の生命、生存、生活を脅かし、障害者の人権を軽視し、ひいては生存を否定する状況を招くことが危惧される。
  2.  戦争は生命、生活、生きる手段を奪う。
    同法案は、集団的自衛権の行使を可能にする「戦争法案」である。戦場では戦闘員非戦闘員の区別はない。戦争は人々の生命、生活、生きる手段を奪う。とりわけ社会的に不利な立場に置かれている障害当事者の生存を脅かすものである。
  3.  戦闘に貢献できない人々は差別され劣悪な立場に追いやられる。
     高齢者、障害者等は、戦闘に参加できないばかりか、財政的、人的負担となると考えられ、自活能力を基準として等級化され、分断され、劣悪な環境に置かれる恐れがある。
     「戦闘に貢献できない人々」は恣意的に解釈され、民族や性別、セクシュアリティによる排除、階層の分断に利用され、多様な生き方を求めるあらゆる当事者はより苦しめられる恐れがある。
  4.  障害者支援が抑制される。
     現在、財政再建のかけ声により、大幅な社会保障関係予算が削減され、介護報酬の切り下げ、生活ができない年金、また生活保護の受給抑制など、人々の生活はすでに脅かされ、自死を選ぶ人も増えている。同法案により、戦争状態でなくても軍備増強がさらに必要となり、社会保障関連予算はますます抑制される恐れがある。

 ナチス統治下のドイツでは、「安楽死政策」であるT4作戦により、数多くの障害者がガス室や毒物注射で殺害された。このことに象徴されるように、戦争は、排除の極み、人間序列化の極み、差別の極みを現出させる。さらに戦前の日本における傷痍軍人と一般障害者との間には国家補償において大きな差別が存在し、それが戦後に影を落とした。こうした歴史を踏まえ、私たちは憲法に違反し、戦争につながる安全保障関連法案に反対し、同法案の廃案を求める。

以上